D-58ES-18mmを安い21mm合板で作りたい 07/11/04 FE208ES-Rの取説に掲載されているシナアビトンで作る長岡スピーカD-58ES改造版(以下、D58ES-18mmという)があるのだが、これがなかなかよい改造である。で、シナアビトンなんかの高級材は買えない人たち(私です)のためにこれを21mmサブロク合板で作りたいと思ったわけである。(というか、これを参考にD-55を改造しておきながら、D-58版がないなと思っただけなのだが。) アプローチとしては2つある。ひとつはD58ES-18mmを21mmに寸法換えする。もうひとつは、長岡先生のD-58ESをFostexと同じ考え方で改造する。考えなくても後者がベターであることは自明である。さらに、音道内部は長岡先生の設計を無闇にいじらないことにした。ということでできたのが以下。天板の二重化と背面版の強化だけである。うーん、安直すぎるのだが・・・。「D58ES-21mm.skp」をダウンロード(zip形式で圧縮しています) ▲D-58ES-21mmの完成予想図 バッフルは天板が二重になったため音道全体が下に21mm下がってしまうのにあわせて下部を21mm大きくした。D-58そっくりになった。側板も縦が21mm長くなっている。底板も21mm奥行きが長くなった。うーん、でかいし重いだろうな・・・。 ▲音道はD-58ESとまったく同じである ▲リアビュー これぞ究極のD-58ではないだろうか。 ▲板取図 どうしても502mmの天板が取れないので寄木にしてあります(イマイチ)。バグありの予感。ネーミングは、D-58ES-18mmからの発想だからであるが、もともとD-58ESは21mmなので、違和感はあるかもしれないがそんなことはどうでもいいのである。 その後・・・ 07/11/11 うっ、板取図でバッフルを拡張するのを忘れていた。でももうこれ以上は大きくできない・・・orz。ということでもとのままの寸法にする。で、見た目としては以下のようになる。 ▲バッフルをオリジナルのままにした 比較してみた。 ▲左から、D-58ES-18mm、D-58ES-21mm、D-58ES FE208ES-R用にチューニングしてみた 2008/01/04 FE208ES-Rの実効振動面積が減少しているため、このままでは絞り率が1を超えてしまう。そこで第1音道と第2音道に調整用の板を追加した。そして、第5音道を10mm拡大した。 現在のD-58ES-21mmのスロートは、 幅360mm-補強板分18×2mm、高さ60mmであり、FE208ES-Rの実効振動面積が198.46cm2であるから、絞り率は、 (360-18×2)×60=190.8cm2 絞り率=190.8÷198.46=0.96 となる。 音道の断面積は、
となり、グラフにすると、 となる。 ▲第1音道と第2音道の調整用板 次に空気室の容量の計算だが、 ユニットとホーンのクロスオーバーを200Hzとすると、 Va=10×190.8÷200=9..54g とすると空気室の仕切り板の位置は、 9.54*1000000/(95×360)=278.9mm となるので補強材を勘案すると290mmが適当であろう。 ▲チューニングのようす ▲板取図 ↑20番板がない・・・08/01/21 こういうのもありでは?・・・2008/01/15 ▲第4音道を追加した D-118でやった改造が目から鱗状態でなかなかよさげなのである。こうするとスムースな音波の広がりになりそうである。
▲音道断面積比較グラフ ▲板取図 ↑20番板がない・・・08/01/21 スロートの絞り率を0.8〜0.85にしてみる・・・08/01/20 D-58系には低音が出る出ないという論争が常にある。それはなぜなのだろうか。これほどエンクロージャを大型化したのだからD-3系にはない低音が出てもおかしくないのに「失敗作」の烙印を押されるケースが後をたたない。一方で、こよなく愛している方もある。つまり、低音は出ているのである。しかし、それはバックロードホーンの本来のブーストされた低音ではないのではないか。それをダメだという人といいと思っている人との境目が歴然とあるような気がするのだ。そして、それには必ず原因があるはずである。私は、それが絞り率であると推定する。これについては、D-58ESのページで言及した。ということで標題の改造になるのである。 スロートを高さ50mmとすると、絞り率は、 (360-21)×50=169.5cm2 絞り率=169.5÷198.46=0.85 となる。これはD-55にFE208ES-Rを取り付けた場合とほぼ同じである。 すると、各音道の高さは以下のとおりとなる。
▲音道の断面積 ▲現在の音道寸法 第2音道に設置した調整用の板は取り外した。 ▲板取図 補強材を入れてみた・・・2008/02/28 D-51.1と同様の補強材を入れてみた。 ▲音道のセンターに補強材を設置 ▲こんな感じ ▲問題はこのパーツ 実際の製作ではやはりこのパーツが鍵を握るだろう。完成度はこのパーツの精度によると言っても過言ではない。こんなことをしてしまうと13番補強板のサイズを云々していたのがまるで意味がなくなってしまうのだが・・・。エンクロージャとしては相当に強固になる。さて、これが吉と出るか凶と出るかはやってみないとわからないのである。補強のし過ぎはイカンと言われているのだがこれはし過ぎに当たるのだろうか。というか、それでなくても重いD-58ESがさらに重くなってしまうのである。煮詰まるほどにデンジャラスになるのはいつものことである。 背面補強の妥協・・・2008/03/04 音道のセンターに補強をするなら背面板の補強は必要ないだろう。 ▲こうすれば比較的簡単にできるのでは・・・ 補強材をひとつにしてしまうとどうやって組み立てたらいいんだろうと悩んでいたのだが、結局パーツを分解して組み立てて、ひとつにすれば比較的現実的だなと思ったのである。 ▲補強材の分割方法 ▲板取図 うーん、そろそろ煮詰まってきた。ちょっとデンジャラスだが挑戦のしがいはあるんじゃないかと思うのである。背面補強をやめたので重量もオリジナルのD-58ESより天板と音道センター補強板分が重い程度だろう。 板取図からモデリングしてみた・・・08/03/16 図面が合っているかどうかは、その図面からモデリングしてちゃんとできあがるかどうかをやってみるのが一番よろしい。ということでやってみた。 ▲このとおりちゃんとできあがった 図面は間違っていないようだ。ではどうやったらうまく制作できるだろうか。 ▲キモとなるかたまり このキモとなるこの「かたまり」をいかに精度よく組み立てられるかが成否の分かれ目であろう。 ▲9と9'と補強板 まずここから始める。ボンドとともに見えないところはビスを使用し頑丈に組み立てる。 ▲ビスはこのようにざぐりを入れておきビスの頭が後の接着のじゃまにならないようにしておくこと ▲7と補強板を接着 7と補強板、9と7の接着はビスが使える。 ▲3と2、2'とバッフルの補強板 これらもビスが使えるのでビスを使う。 ▲1を接着 補強板や3などの接着はビスが使える。 ▲4と8(補強板)を接着 4と8をビスとボンドで接着した後、今まで制作したかたまりにボンドで接着。1との接着はビスが使える。 ▲10を接着 前面飾り段は一番最後でよいので、ビスとボンドで10を接着。 ▲21と18と補強板 21と18と補強板をボンドとビスで接着し、かたまりに接着。10番板と上の補強板との接着はビスが使える。 ▲12と補強板 12と補強板はボンドとビスで接着し、かたまりに接着。10番板との接着はビスが使える。 ▲キモのかたまり完成 あとは音道の直角部分に三角材を接着した後、水中ボンドで隙間がないようにガチガチに補強する。 この状態で音道を塗装したい場合はしておく。マスキングして黒色のペンキを2度塗り、ニス3度塗りくらいでおk。塗りたくない場合はあえて塗らなくてもよい。音はたいして変わらない。まぁ、安い合板の場合は、ニスによって強度の向上は期待できる。フィンランドバーチなんかの場合は逆にしない方がいいかもしれない。 このかたまりを内側の側板に合わせた状態で霧吹きで水をかけ、このかたまりを取り去ると、側板に音道の痕跡ができる。それを目安に、ビス穴をあけておくのだ。内側の側板は大量のボンドとビスで接着する。 とまぁ、こんな具合で脳内では作業手順が完成しているのである。我ながら完璧である。 トップページへ ※skpファイルはGoogle SketchUpというソフトのデータファイルです。Google SketchUpは以下から無償でダウンロードできます。 http://sketchup.google.com/download.html 見るだけならビューアが便利です。ビューアのダウンロードはこちら。 http://www.sketchup.com/?sid=40 Google SketchUp 6.0.*** Viewerのバージョンのものをダウンロード・インストールしてください。 |
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参考:D-58ESは↓の書籍に掲載されています。 長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術 図面集編 SpecialEdition 2 |